約10年の開発期間を経て、 Blue Origin の野心的な New Glenn ロケットが Kennedy Space Center で初打ち上げの準備を整え、商業宇宙打ち上げ産業の競争環境に変化をもたらす可能性を示しています。この節目は、技術的な成果だけでなく、軌道打ち上げにおける SpaceX の優位性に挑戦する戦略的な一手となります。
巨人の第一歩
宇宙飛行士 John Glenn にちなんで名付けられた高さ97メートルの New Glenn ロケットは、2025年1月12日未明に打ち上げが予定されており、日本時間午後1時から3時間の打ち上げウィンドウが設定されています。この無人ミッションでは、通信、電力システム、クラウドコンピューティング機能など、将来の軌道運用に不可欠なシステムをテストする Blue Ring Pathfinder ペイロードを搭載します。
打ち上げ詳細:
- 日付:2025年1月12日
- 時間:米国東部時間午前1時から打ち上げウィンドウ開始
- 場所: Cape Canaveral 、フロリダ州
- ペイロード: Blue Ring Pathfinder
- ミッション種別:無人試験飛行
32階建ての高さを誇る Blue Origin の New Glenn ロケットが、2025年1月12日の初打ち上げに向けて準備を整えています |
技術的優位性と競争力
New Glenn は打ち上げ市場に印象的な能力をもたらします。液化天然ガスと液体酸素を使用する7基の BE-4 エンジンを搭載し、 SpaceX の Falcon 9 の2倍の貨物容量を誇ります。第一段は再利用可能で、海上プラットフォームへの垂直着陸により、ブースター1基あたり最大25回のミッションを目標としています。低軌道に45トン、静止軌道遷移軌道に13トンの打ち上げ能力を持ち、大型打ち上げ分野での強力な競争相手となります。
New Glenn と Falcon 9 の比較:
- 貨物容積: Falcon 9 の2倍
- 打ち上げコスト:1億1000万ドル vs 7000万ドル
- 第一段階の再使用目標:25回のミッション
- ペイロード能力:
- 低軌道:45メートルトン
- 静止遷移軌道:13メートルトン
組立施設に展示されている New Glenn の印象的なロケットエンジンは、この新しい打ち上げ機の背後にある技術力を反映しています |
商業戦略と市場への影響
Blue Origin の価格戦略は積極的で、1回の打ち上げ料金を約1億1000万ドル(約160億円)に設定しており、これは SpaceX の Falcon 9 の7000万ドル(約100億円)と比較すると高額です。しかし、ペイロード容量が2倍であることから、衛星1基あたりの打ち上げ価値は実質的に優れています。これにより、すでに Amazon の Project Kuiper コンステレーションや AST Mobile など主要な顧客を獲得しており、後者は過去最大の低軌道衛星の打ち上げを計画しています。
政府契約と将来の展望
米国防総省は打ち上げオプションの多様化に強い関心を示し、2029年までの総額56億ドル(約8200億円)相当の打ち上げ契約について、 SpaceX と United Launch Alliance とともに Blue Origin を選定しました。これは Blue Origin が政府の打ち上げ分野で信頼できる選択肢として確立する重要な機会となります。
投資と長期ビジョン
New Glenn プログラムだけで推定100億ドル(約1.5兆円)を投資し、 Jeff Bezos の個人資産に支えられた Blue Origin は、長期的な宇宙インフラ開発への取り組みを示しています。同社の「gradatim ferociter(着実に、そして果敢に)」というアプローチは、 SpaceX の迅速な反復戦略と比べて遅いものの、頻繁な打ち上げを支える重要な技術的成果と製造能力をもたらしています。