世界のテレビ産業の景観が歴史的な転換期を迎えています。かつて家電業界で支配的な存在だった Panasonic が、73年続いた伝統的なテレビ事業からの撤退を検討しています。この展開は、日本の電機大手にとって一つの時代の終わりを告げるとともに、世界のテレビ市場の劇的な変革を象徴しています。
2024年世界テレビ市場シェア(主要ブランド):
- Samsung
- TCL
- Hisense
- LG
- Xiaomi
- Skyworth
- Sony
- VIZIO
- Haier
- Philips
巨人の凋落
1952年に白黒テレビから始まった Panasonic のテレビ事業は、2010年に15%以上あった世界市場シェアが2024年にはわずか1%まで急落しました。年間テレビ出荷台数も2016年の631万台から2024年にはわずか202万台まで激減し、この急激な下降傾向が同社に市場での立ち位置の再評価を迫ることとなりました。
Panasonic テレビ事業の衰退:
- 2016年:出荷台数631万台
- 2024年:出荷台数202万台
- 現在の世界市場シェア:1.0%
- 現在の日本国内市場シェア:9.0%
中国ブランドの目覚ましい台頭
Panasonic の衰退は、中国メーカーの急速な台頭と時を同じくしています。驚くべきことに、中国ブランドは現在、 Panasonic の本拠地である日本国内のテレビ市場の49.9%を占めています。 Hisense は40.4%という印象的な市場シェアを持ち、 Sony の9.7%や Panasonic の9%を大きく上回っています。この変化は、消費者の嗜好と市場力学の根本的な変化を表しています。
日本のテレビ市場における中国ブランドの状況:
- 総市場シェア:49.9%
- Hisense システム:40.4%
- TCL :9.5%
戦略的再編
Panasonic Holdings は現在、家電子会社の Panasonic Electric をスマートリビングソリューション、空調・フードデリバリーシステム、照明・電気工学の3社に再編することを計画しています。この再編を通じて、2027年までに1,500億円、2029年までにさらに1,500億円の利益増加を目指しています。
市場への影響と将来の展望
Panasonic のテレビ市場からの撤退は、特に現在 Panasonic の委託生産の約81%を担当している TCL などの中国メーカーにとって、新たな機会を生み出す可能性があります。 Panasonic が残す高級テレビセグメントの空白は、競争力のある価格と先進技術を組み合わせることに成功した新興プレーヤーによって埋められる可能性があります。
技術革新と市場適応
Panasonic の衰退は、市場がLCDへとシフトする中でプラズマディスプレイ技術に多額の投資を行うという戦略的な判断ミスにも一部起因しています。この技術的な賭けと、よりコスト効率の高いメーカーとの競争激化が、現在のテレビ事業からの完全撤退を検討する状況へと導いています。