PL/Rust の採用、賛否両論:セキュリティ懸念と実装の課題

BigGo Editorial Team
PL/Rust の採用、賛否両論:セキュリティ懸念と実装の課題

PostgreSQL に Rust を統合する PL/Rust は、データベースコミュニティ内で大きな議論を呼び起こし、この革新的な拡張機能の機会と懸念の両方が浮き彫りになっています。現在 Amazon RDS で利用可能となっていますが、データベース管理者や開発者からは様々な反応が寄せられています。

セキュリティと信頼性の考慮事項

主要な議論の一つは、PL/Rust のセキュリティモデルとその信頼性の指定に関するものです。この拡張機能は、カスタムリントや postgrestd と呼ばれる Rust 標準ライブラリの特別なフォークを含む、安全でない Rust コードに対する特定の保護機能を実装しています。しかし、サードパーティのクレートや既知の Rust コンパイラの健全性の問題による潜在的な脆弱性について、コミュニティメンバーから正当な懸念が提起されています。

主要な実装機能:

  • 特殊なリントを備えたカスタム rustc ドライバー
  • postgrestd :特殊化された Rust コンパイルターゲット
  • ユーザー関数内での unsafe コードをブロック
  • Amazon RDS で利用可能
  • 現在、信頼版と非信頼版をサポート
  • 信頼版は Linux x86_64/aarch64 に限定

従来のソリューションとのパフォーマンス比較

データベースのパフォーマンスへの影響が、専門家の間で重要な話題となっています。ストアドプロシージャは一般的に型安全で JIT コンパイルされますが、コミュニティメンバーは異なる手続き型言語間でのパフォーマンスの特性の違いを指摘しています:

「エンジニアリングはトレードオフです。ほとんどのデータベースでの制限要因はI/Oです。ストアドプロシージャでI/Oを削減できるなら、それを実行すべきでしょう。データベース自体でSQLから抜け出すことで、それを達成できます。」

実装の課題

Amazon RDS で利用可能になっているにもかかわらず、開発者はローカル開発環境で大きな困難を報告しています。Docker化プロセスとローカルセットアップは特に困難とされ、改善されたドキュメントとセットアップガイドを求める声が上がっています。この実装の摩擦は、開発チームの間での採用率に影響を与える可能性があります。

プロジェクトのメンテナンスに関する懸念

コミュニティは、プロジェクトの開発ペースについて懸念を表明しています。特に、7月に予定されていた PostgreSQL 17 のサポートが未だリリースされていないことなど、注目すべき懸念があります。これにより、長期的なメンテナンスとサポートの保証を必要とする潜在的な採用者の間で躊躇が生じています。

データベース管理者の視点

データベース管理者は従来、主にリソース管理の懸念から、手続き型言語の拡張機能に対して慎重な姿勢を示してきました。Foreign Data Tables のような拡張機能は本番環境で価値を証明していますが、新しい言語ハンドラーの導入には、システムリソースとパフォーマンスへの影響を慎重に考慮する必要があります。

PL/Rust の将来は、これらの様々な懸念に対処しながら、PostgreSQL 環境に Rust の安全性とパフォーマンスの利点をもたらすという約束を維持できるかにかかっています。プロジェクトが成熟するにつれて、より明確なドキュメントと継続的なセキュリティの改善が、より広い採用のために重要となるでしょう。

参考:PL/Rust: A Trusted Procedural Language Handler for Rust