ハイパフォーマンスコンピューティングの分野で重要な節目を迎え、 AMD がスーパーコンピューティング分野での地位を強化しています。 Lawrence Livermore National Laboratory ( LLNL )で稼働を開始した El Capitan スーパーコンピュータが、正式に世界最速スーパーコンピュータの称号を獲得し、国家安全保障と科学研究における計算能力の重要な進歩を示しました。
性能比較:
- 2番目に速い Frontier より45%高速
- AMD は世界トップ10のスーパーコンピュータのうち5台に採用
- トップ10の総合性能の61%を占める
世界最速のスーパーコンピュータ El Capitan を収容する最新のデータセンター |
技術的成果
El Capitan は、 High-Performance Linpack ( HPL )ベンチマークで1.742エクサフロップスの持続的性能を達成し、理論的なピーク性能は2.746エクサフロップスに達しました。この驚異的な成果は、1秒間に540億年分の計算を実行する能力に相当します。システムのアーキテクチャは44,544個の AMD MI300A APU を中心に構築され、24個の Zen 4 CPU コアと CDNA 3 グラフィックスエンジンを組み合わせた高度なパッケージとなっています。
主要仕様:
- 性能:1.742エクサフロップス(持続)、2.746エクサフロップス(ピーク)
- プロセッサ:44,544基の AMD MI300A APU
- メモリ:5.4ペタバイト
- 総計算コア数:11,039,616(CPU+GPU)
- 消費電力:35メガワット以上
- エネルギー効率:58.89ギガフロップス/ワット
アーキテクチャの革新
このスーパーコンピュータの設計は、146億のトランジスタを持つ13個のチップレットを特徴とする MI300A プロセッサを通じて、 AMD の技術力を示しています。システムはキャッシュコヒーレントメモリアーキテクチャを採用し、 CPU と GPU コンポーネント間のデータ移動を大幅に削減することで、効率性とパフォーマンスを向上させています。各 MI300A チップには128GB の HBM3 メモリが搭載され、システム全体で5.4ペタバイトのメインメモリを備えています。
El Capitan スーパーコンピュータのアーキテクチャの重要なコンポーネントである AMD Instinct プロセッサ |
エネルギー効率と環境への影響
その膨大な計算能力にもかかわらず、 El Capitan は優れたエネルギー効率を維持しており、フル稼働時の消費電力は35メガワット以上で、58.89ギガフロップス/ワットを実現しています。この性能は Green500 ランキングで18位に位置し、最先端の性能と環境への配慮が両立可能であることを示しています。
戦略的応用
National Nuclear Security Administration は El Capitan を核兵器の備蓄管理における重要な用途に活用し、経年劣化のシミュレーション、安全性評価、信頼性試験などを行います。これにより、地下核実験の必要性を排除しつつ、新しい ICBM 設計の開発が可能になります。このシステムの機能は従来の HPC ワークロードと AI アプリケーションの両方に対応し、ハイブリッドコンピューティングソリューションの最前線に位置しています。
市場への影響
El Capitan での AMD の成果は、以前の Frontier での成功と合わせて、同社に世界最速の2台のスーパーコンピュータの支配権をもたらしました。この優位性は、ハイパフォーマンスコンピューティング分野における重要な転換点を示しており、 AMD のソリューションが強力かつコスト効率に優れていることが証明されています。特に、競争力のある効率性指標を維持しながら、優れた性能を提供する同社の能力が際立っています。